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もしも日本が他動的な理由で有人宇宙船を打ち上げる事になってしまったなら 作者:ほうこうおんち

第11章:「空飛ぶカプセルホテル」滞在記

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宇宙ステーションと初ドッキング

この物語は、もしも

「科学的な要望より先に政治的な理由で日本が有人宇宙飛行船を運用」

というシチュエーションでのシミュレーション小説です。

2020年頃の各国をモデルにし、組織名もそのままだが、

個人や計画そのものにモデルはあっても、実在のものではない、

あくまでも架空の物語として読んで下さい。

「ジェミニ改」13号機はアメリカ人宇宙飛行士と日本人宇宙飛行士のペアで打ち上げられる。

ドッキングは都合5回行われる。

12号機で、無人遠隔操作によるドッキングは成功していた。

まずその追試験、2人搭乗した状態で地上からの遠隔操作によるドッキングを行う。

これが成功した後、一旦切り離し、ランデブー飛行を地球1周分した後、まずアメリカ人飛行士がモニターとコンピュータとを操作する自動ドッキングと、操縦桿を握って目視飛行によるマニュアルドッキングをする。

然る後に、再度切り離し、同様に地球を1周した後に今度は日本人飛行士による自動ドッキングとマニュアルドッキングを行う。

地球1周する意味は、日本の管制空域で実験を行う為である。

「ジェミニ改」は飛行士の訓練機であるので、これが本来の使用法と言える。

地上シミュレーターでは経験出来ない、窓越しのターゲットマーカー追跡、ガツンと当たる感触等を味わう。


アメリカ人飛行士のライナー氏は、スペースシャトルでは何度もISSのドッキングを経験したという。

スペースシャトルが廃止されてからもう長く、飛行士としては引退していたが、久々にドッキング、それも指導教官として見せられるという事で来日した。

日本人飛行士の谷元氏は、この人も元航空自衛隊のパイロットで、戦闘機乗りだったという。

戦闘機が新型機に更新されるのに合わせて、いつかやってみたかった夢に向かって退官し、宇宙飛行士となった。

目の良さがズバ抜けていて、

「巡航高度から女子高のプールではしゃいでいる女の子が見える」

とか嘯いていた。

(なお、「退官したから言えるジョークですからね! 現役で言ったら始末書ものっす」とのこと)


「ジェミニ改」は1960年代のジェミニ宇宙船より、飛行制御コンピュータも、連動して出力を調整する姿勢制御ロケットも遥かに進歩している。

本来ならば、宇宙船から出す信号に宇宙ステーションがレスポンスを返した時点で「ドッキングモード」に移行し、モニタが表示する数字を見ながら、危険と判断したなら緊急解除装置を起動させる、それ以外は数値が0から-1(これは電波の反射具合でたまに出る数字で、問題無いそうだ)を示してドッキング成功となるのを待てば良い。

しかし、訓練機である以上、それだけでは意味が無い。

機械が故障している想定、あるいはドッキング管制装置の無い相手とフェザータッチで接触する必要がある場合を考え、窓から相手を視認し、感覚で速度を理解し、指先で姿勢制御エンジンの噴射を調整しながらドッキングを行う訓練も行う。


この辺は秋山や小野たちが纏めた、実用までのスケジュールとカリキュラムに書かれている事である。

最初の実技なだけに、書いた本人たちも管制センターで立ち会っている。

無理が無いかとか、分かりづらくないか、とか確認をする。

谷元飛行士の「目が良い」のを見込まれたのも、この距離感がどうなのかを後で聞き取り調査する為だ。

周囲に比較対象物の無い宇宙では、大きさ、距離、彼我の速度を錯覚しやすい。

目の良さはこの点、重要な資質である。




打ち上げは無事成功。

軌道が近い為、軌道修正を2回行っただけで「こうのとり改」とのランデブーコースに入った。

ドッキングの為のアプローチは、基本低い軌道から行う。

同じ軌道で速度を上げると、速い方の宇宙機は高い軌道に変わってしまう。

そこで僅かに低い軌道を飛ぶと、低い軌道の方が高い軌道よりも角速度は速い為(実際の速度は外側の方が速いが)慣性航行だけで追いつく。

そこで再度軌道を変え、というか徐々に高度を上げて同じ軌道に達し、じわじわと近づいてドッキングする。

この「どれくらいに見えたら、距離はどれだけある」「高度の差はどれだけある」を計器の数字だけでなく、目で見るのも大事な訓練だ。

シミュレーターで作られたものより、やはり現物は貴重だろう。


地球1周に約90分、5周で450分だが、ドッキングしてしばらく接続している時間も有る為、約9時間の訓練となった。

慣れているライナー飛行士は

「まあ、交代要員がもう少し居れば楽だね」

と余裕だったが、今回が初飛行の谷元飛行士はクタクタに疲れ果てたようだ。

最後のドッキングを終え、送って来た通信は

「無重力でも点せる目薬を求む」

であった。


谷元飛行士からの報告は、目に関する部分で聞く価値の有るものが多い。

サングラスで、太陽光を遮るのだが、視認距離に若干のズレが出るそうだ。

サングラスも良いが、サンバイザーが窓についていれば有難いとの事。

無重力なんだから、遮蔽用の板か何かを浮かせておけば良いとも思ったが、微調整が面倒臭い、力加減でちょっとずつズレるのが気に食わない、と。

また、窓も太陽光を拡散しないよう、もっと透明度の高いものが良いとの事だった。

実はそれを考慮して、相当に透明度の高い素材を使っていたのだが、打ち上げ時に空中の水滴との接触で僅かに傷が出来て、そこが光を散乱させている事が後に分かった。

対処法として、シールを貼るというスマホの液晶保護のような事でクリアする。


ドッキングに成功しても、実はすぐにはハッチ開放をしない。

宇宙ステーションと宇宙船をしっかりロックさせる。

その後、宇宙ステーション側の機能にアクセスし、気圧が同じかどうか、有毒ガスが発生していないかどうかを確認し、室温を上げるよう温度調整を行う。

大体丸一日かけてチェックするが、初回の今回は2人が同じ確認作業をする為、少々時間をかける。

その間、2人は狭い「ジェミニ改」で寝泊まりする。

狭いとはいえ、旧ジェミニの1.4倍の最大直径4.2メートル、内径はもう少し小さいが、それだけ余裕がある為、ドッキングハッチのある貨物室に下りて、そこで手足を伸ばして寝る事も出来る。

別に座席でベルトを締めて、エコノミークラス症候群になるような寝方をせずとも好い。


ドッキングから30時間後、2人の飛行士のダブルチェック、いや、地球の管制センターも込みでトリプルチェックで大丈夫と判断された。

ついに宇宙ステーション「こうのとり改」のハッチが開いた。

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